ぼくたちの家族 | 明日は我が身かも

やけにリアリティのある家族ドラマ

ぼくたちの家族

『ぼくたちの家族』（2014／日本）
監督：石井裕也　出演者：妻夫木聡、池松壮亮、原田美枝子、長塚京三

平凡でどこにでもありそうな普通の家族の話。

これも、2014年観て良かった映画で挙げた映画です。そっちでも書いたけど、石井監督が撮る家族には興味がありました。『川の底からこんにちは』での、脆そうだけど壊れない複雑な家族関係（親子関係）の描写がお見事だった石井監督が描く、バラバラになりかけている家族。これは決して遠い世界の話ではなく、平凡でどこにでもありそうな普通の家族の話でした。

ぼくたちの家族
あらすじ：お母さんが難病に冒されます。

4人家族の若菜家は、平凡なごく普通の家族でした。ある日突然、母・玲子（原田美枝子）に脳腫瘍が見つかります。余命はたったの1週間。父（長塚京三）、長男・浩介（妻夫木聡）、次男・俊平（池松壮亮）は、力を合わせてなんとかしようとしますが、今まで何も問題がないと思っていた家庭に、実は多額の借金があったことが明らかになります。

見どころ

深刻すぎないリアルさ
家族それぞれの人間臭さが愛しい
キャストがハマってた

描写が深刻すぎないところが妙にリアルで、「入院費」「面会時間」「家族の距離感」などのワードが頭に浮かび、現実的なことばかり考えてしまいました。この手のストーリーのドラマで描かれるのは、通常悲しさとか寂しさとか感情面がメインだと思うけど、この映画では逆に感情はそこそこ、現実面がしっかりと描写してあります。こんな状況になっても、性格は変えられないし仕事にだって毎日行かなきゃいけない。それが滑稽だったり哀しかったりして人間臭いんだなー。

石井監督は『舟を編む』でも、たとえば主人公の結婚とか、わりと大きなイベントもさらりと省いて主軸の辞書を作るというストーリーだけを描いていました。その独特の視点が面白く、今回もただのお涙頂戴ではない「ちょっと違う」家族ドラマが見れたなぁと満足です。

妻夫木聡の泣き笑いはなんかぐっとくるし（『マイ・バック・ページ』のラストシーンも良いですね！）、池松壮亮は甘え上手なお調子者キャラが最高にハマってました。いつもへらへらとしている彼が、後半ちらりと見せる弱さにもぐっときます。