CINEMA MOND【シネマモンド】

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抱擁のかけら | 融解、そして再生を

徐々に明らかになる事件の全貌

抱擁のかけら

抱擁のかけら』(Los abrazos rotos/2009/スペイン)
監督:ペドロ・アルモドバル 出演者:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ

一言でいえば、切ない。

アルモドバル映画にハズレなし。とりあえず全作品観ておきたい監督の1人です。彼の映画の中で描かれる人間の欲求のようなものってちょっと(いや結構?)歪んでて、それが滑稽だったり変態だったり残酷だったりするわけですが、結局すべて”切ない”に辿り着くんですよね。この映画も例に漏れず、切ない。

抱擁のかけら
あらすじ:だれも語ろうとしなかった14年前の事件の真相が明らかに。

舞台は2008年のマドリード。かつて映画監督だったマテオ・ブランコ(ルイス・オマール)は、14年前ある事件で視力を失い、それからは脚本家のハリー・ケインとして生きています。ある日、彼は「ライ・X」と名乗る男(ルーベン・オカンディアノ)から脚本の依頼を受け、14年前のことを思い出しました。昔のことを教えてほしいという助手のディエゴ(タマル・ノヴァス)に、彼は思い出話を語り始めます。


見どころ
  • ドロドロだけどカラッとしてる
  • 鮮烈な色彩
  • ペネロペはスペイン映画で魅力が引き立つ

冒頭の方では回想シーンが入り乱れて、時間軸が行ったり来たりでちょっと混乱しましたが、その後はハリーの回想をメインにして物語は進みます。そして全てを話し終わったあと、今度はジュディット(ハリーの昔からの仕事仲間でディエゴの母)の告白から事件の全貌が少しずつ見えてきます。そんなミステリーっぽさもあるドラマです。

アルモドバルの扱うテーマはいつもわりと重い。ドロドロの欲望を描いているのに仕上がりはカラッと乾いていて、心が痛むというよりもただただ圧倒されてしまいます。本作でも愛への執着がすごかった。登場するのはDVストーカー男。恋人の姿を息子に常に盗撮させて、それを見ながら読心術で会話を盗み聞く。非常にこわいです。ただ、こういう存在を完全に悪として描かないのがアルモドバルです。これも一種の愛の形なんだろうと思わせる切なさがある。他の登場人物だって切ない。キッチンに立つレナ(ペネロペ・クルス)の台詞も、彼女を守れなかったハリーも、ジュディットの最後の告白も偶然の事故もぜんぶ切ないよ。

それからアルモドバル映画といえば、マティスのような鮮烈な色彩が美しいです。色彩感覚もそうだけど、インテリア、小物に至るまでとにかく彼のセンスが好きだ〜。1カット1カットにこだわりを感じる構図もかっこいい。本作だとペネロペがトマトをカットするところを真上から撮っているシーンなんかは印象的でしたね。

[Photo: © 2009 Emilio Pereda&Paola Ardizzoni / El Deseo]

アルモドバル映画の常連、ペネロペ・クルス。

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