CINEMA MOND【シネマモンド】

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マッチ工場の少女 | 無言と余韻を味わう

ブラックコメディー仕立てのカウリスマキ的サスペンス

マッチ工場の少女

マッチ工場の少女』(Tulitikkutehtaan Tytto/1990/フィンランド)
監督:アキ・カウリスマキ 出演者:カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ

…………………………。

68分という短めの映画ですが、起承転結のはっきりとした明快なストーリーと独特の間合いで観賞後の満足度は高いです。アキ・カウリスマキの映画って、見れば見るほど好きになる不思議な魅力がありますね。彼の映画を観終わったあとにはいつも、もっと他の作品も観たい!と強く思います。好きだなぁ。

マッチ工場の少女
あらすじ:地味な女の子が男に遊ばれ復讐します。

イリス(カティ・オウティネン)はマッチ工場で働きながら、母(エリナ・サロ)と働かない義父(エスコ・ニッカリ)と一緒に暮らしている地味な女の子です。ある日、彼女はショーウィンドウで見かけた綺麗なドレスに一目惚れし、もらったばかりの給料でそれを買ってしまいます。それを知った家族は怒り、彼女は返品を命じられますが、かまわずそのドレスを着てダンスホールへと繰り出します。すると、そこである男性と出会うのでした。ふたりは一夜を共にするのですが、彼にとっては遊びで…。


見どころ
  • カティ・オウティネンの表情豊かな「無表情」
  • ユニークな挿入歌は必聴です
  • 色んな無言を味わおう

主人公の少女(といっても20代後半くらいに見える)を演じるのは、カウリスマキ映画常連のカティ・オウティネン。寡黙で無表情なんだけど、微細な表情の変化で観ている側に感情を伝えてくるのですごいです。

台詞は最小限しか話さず、無言と無音が続きます。一方で、店内BGMやジュークボックスから聴こえてくる挿入歌が多く、その歌詞によって登場人物の心情を表すという手法がとられています。つい笑ってしまうようなユニークな歌詞が面白い!そして他のカウリスマキ映画と同様に、音楽は文句なしにかっこいいのです。

それから、余韻を残す撮り方も良かったです。例えば、バーでひとりテーブルに座る女に声をかける男。ふたりは連れ立ってダンスホールへ行くけど、カメラはグラスだけが残されたテーブルを映し続ける。そんな風にして登場人物に近づきすぎることなく、そこには一定の距離感を保たれます。

この映画では、いろんな無言が描かれます。家族との無言。ボーイフレンドとの無言。そして、無音のエンドロールでは、制作者と観客の間の無言を表しているかのようでした。

[Photo: © 1990 Villealfa OY]

カウリスマキ映画そろえたいよー。

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