トウキョウソナタ | ある平凡の崩壊と再生
現実味のある映画かと思いきやぶっ飛んだ展開に
『トウキョウソナタ』(Tokyo Sonata/2008/日本・オランダ・香港)
監督:黒沢清 出演者:香川照之、小泉今日子、井之脇海
いっそのこと1回壊してしまった方がいいのかも。
ありそうでない、なさそうであるような家族の物語です。平凡に始まり崩壊と絶望を経て平凡に戻ってくるという喜劇。コミュニケーション不足で殺伐とした食卓が最初と最後で印象ががらりと変わるのが面白い。ドビュッシー『月の光』のピアノの旋律が美しくて後味がとても良かったです。
あらすじ:ごく普通の4人家族がじわじわと家庭崩壊していきます。
平凡なごく普通の4人家族である佐々木家、しかしなんだかみんなおかしい。リストラされたことを家族に言えずにいる父・竜平(香川照之)、家族に相手にされず虚無感を抱えている母・恵(小泉今日子)、アメリカ軍へ入隊すると言い出す大学生の長男・貴(小柳友)、ピアノを隠れて習っている小学6年生の次男・健二(井之脇海)。じわじわと進行する家庭崩壊はある出来事をきっかけにして加速していきます。
- 黒沢清独特の乾いた空気感
- ベテラン俳優の演技が見応えあります
- 後味がとても良い
あらすじを書いて思ったけど、あらすじでは面白さが全く伝わらない作品だな…。この映画の魅力はなんといっても淡々として乾いた空気感です。黒沢清監督の映画って大体こんな雰囲気ですけど、平凡な家族を題材にしているだけにより引き立つ感じがします。「家庭崩壊」というテーマでも全然重くないしお涙頂戴しないしむしろ笑えるくらいです。
わりとこぢんまりとした映画だなあと思って観ていると、ある事件が起こってそこからの広がりというか加速感がすごいです。少々ぶっとんだ展開になっていきますが置いていかれないように!役所広司が出てきて、ああ!やっぱり黒沢清映画だ!と感激しました。しかし重要な役ではあるけど脇役にしては存在感大きすぎます、役所さん。それから小泉今日子はこういうふわっとした役が本当ハマりますね。失踪する主婦の役とかどんどんやってほしい。
うまくいってると疑わなかったものが実はそうではなくて何かをきっかけに簡単に崩壊してしまう、みたいなことは身近にもありふれているのだと思います。そんな関係の脆さをメインで描きつつも、ラストでは頼もしい希望を感じさせてくれて救われました。もういっそのこと1回壊してしまった方がいいのかも、なんて。
[Photo: © 2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会]
不良主婦役はキョンキョンの専売特許でしょ!