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6才のボクが、大人になるまで。 | 生きた映画を体験

12年間おなじキャストを撮り続けた半分リアルな新感覚ドラマ

6才のボクが、大人になるまで。

6才のボクが、大人になるまで。』(Boyhood/2014/アメリカ)
監督:リチャード・リンクレイター 出演者:イーサン・ホーク、パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター

意味のない時間なんて一瞬たりともないんだなぁ。

先日発表されたゴールデングローブ賞で最多の3冠に輝いた(映画ドラマ部門作品賞、監督賞、助演女優賞)とあって、劇場はほぼ満席でした。12年に渡る長期間、同じキャストで撮影したという映画史上初の試みは、想像以上に面白い体験でした。なんたって「ボク」が本当に成長していって、6才から18才になっちゃうんですもんね。説得力が違います。一定の温度で淡々と少しずつ積み重ねられる映像に、親戚にでもなった気分で成長を見守ってしまいました。きっと彼は世界中から愛される役者さんになったよね!

6才のボクが、大人になるまで。
あらすじ:少年が心身ともに成長していきます。

6才のメイソン(エラー・コルトレーン)は、母親(パトリシア・アークエット)と姉・サマンサ(ローレライ・リンクレイター)と3人暮らし。ヒューストンに引っ越したことがきっかけで、離婚した父親(イーサン・ホーク)とも再会し、子供たちは定期的に父親と会えることになりました。一方、母親は再婚をして家族も増えたけど、義父がどんどん威圧的になっていき、ついには暴力をふるうようになります。3人はまた引っ越すことになり、メイソンを取り巻く環境はめまぐるしく変わり続けます。


見どころ
  • 時の流れを感じる
  • さりげない日常が愛しい
  • 良い子に育って本当に良かった

撮影開始は2002年。意外と映像に古くささはありません。イーサン・ホーク若いなぁ!彼の初監督作『チェルシーホテル』が公開されたのが2002年。学生時代にひとりレイトショーで観たのが懐かしい。そのころからずっと撮り続けてたんだからすごいです。12年間、主要キャストと監督が誰も降板せずに、資金も底をつくことなく、無事撮影が完了して公開までこぎつけたというのは、わりと奇跡に近いのでは。

この映画はキャストの見た目の変化で時の流れを感じさせるだけでなく、時代を感じさせる要素もたくさん詰め込まれています。例えば、ブリトニー・スピアーズに心酔していたサマンサがレディー・ガガを聴くようになったり、ブッシュ政権を批判していた父親が、その数年後にオバマ支持の看板を配ってまわったり。『ハリーポッターと謎のプリンス』の発売イベント(2005年かな)に参加するシーンや、『スター・ウォーズ』の続編に言及するシーンもあります。

メイソン愛用のゲーム機も、ゲームボーイアドバンスからX-BOX、そしてWiiへと変化。小学校にあったコンピューターは懐かしの初代iMac、そしてブラックのMacBookが出てきて、iPod nanoが出てきて、メイソンが高校生になったころにはiPhoneでFaceTimeするシーンが。facebookも話題に上ります。といった感じで、創作なんだけど記録映画のような面白さもあるんです。

当初の脚本になかっただろうことを柔軟に組み込んで、時代を反映させた映像を撮り続けたことで、なんだか生きた映画って感じがしました。ひとつの出来事を深く掘り下げるわけでもなく、過剰にドラマチックに描かれるわけでもない。けど、さりげない風景や日常会話の積み重ねがなんて愛しいんだろう。今はありふれた光景でも、時間が経って見てみると新鮮だったりするように、意味のない時間なんて一瞬たりともないんだなぁ、と改めて感じました。

母親が最後に出てくるシーンがちょっと切なかったので、その後が気になる…。願わくば、この先も撮り続けてほしいなー、なんてね。

[Photo: © 2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c.]

12年間を165分で。

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