やさしい女 | むずかしい愛
悲劇的な愛を描いたブレッソンの幻の名作
『やさしい女』(Une femme douce/1969/フランス)
監督:ロベール・ブレッソン 出演者:ドミニク・サンダ、ギイ・フライジャン、ジャン・ロブレ
静かにすれ違っていくふたり。
公開が決まってから心待ちにしていた本作、やっと観ることができました。『白夜』と同じく、やはりDVD/Blu-ray化の予定がないそうなので観れて良かったー!ロベール・ブレッソン初のカラー作品です。原作はドストエフスキー(未読)。静かに心がすれ違っていく男女のむずかしい愛を描いた作品です。
あらすじ:歳の離れた男女の結婚生活がうまくいかなくなります。
ある衝撃的な出来事からの回想。質屋の男(ギイ・フランジャン)はそこにやってきた若い女(ドミニク・サンダ)に惹かれました。冬の動物園で男は女に求婚し、ふたりは結婚しました。映画を観たり音楽を聴いたりとしばらくは仲睦まじく過ごしていましたが、次第にふたりの心はすれ違うように。男は女が浮気していると思い嫉妬に苦しみ、女も心を病んでいきます。
- ブレッソン初のカラー作品
- かたちの違う愛
- ドミニク・サンダに翻弄される
女には愛があり、男にも愛があった。しかしそれは自分の知っている形とちがっていたのでお互い愛だとは気付かなかった。それが悲劇だった。愛し合うほどに離れていってしまうふたりというのは確実にいます。哀しいことだけど。
ところで、「やさしい」ってなんだろう。具体的に考えれば考えるほど分からなくなってきます。鑑賞前、わたしはこの映画のタイトルの「やさしい」の部分を「思いやりがある」みたいな意味で捉えていたのですが、どうも違ったようです。(そういう意味では、女はあまりやさしくなかった。ついでに言ってしまうと男も。)調べてみると、この場合「おとなしい、穏やかな、柔和な」のような意味合いが近いみたいですね。それは彼女が最後に選んだ解決方法を指しているのかな。
この映画は女優・ドミニク・サンダのデビュー作です。当時17歳とありますが、沈黙の演技が素晴らしく十代だったとは驚き。なにを考えているのか分からない、魔性の女っぷりに翻弄されてしまいます。
[Photo: 『やさしい女』デジタルリマスター版より]
原作はこちら。
こちらもおすすめ
- PREV
- アンジェラ | こんなぼくに絶世の美女が!
- NEXT
- ゼロの未来 | 未来のはずだがノスタルジック