CINEMA MOND【シネマモンド】

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罪と罰 白夜のラスコーリニコフ | カウリスマキ的ドストエフスキー

名作小説を映画化したカウリスマキの長編処女作

罪と罰 白夜のラスコーリニコフ

罪と罰 白夜のラスコーリニコフ』(Crime and Punishment/1983/フィンランド)
監督:アキ・カウリスマキ 出演者:マルック・トイッカ、アイノ・セッポ、マッティ・ペロンパー

アンチ・センチメンタリズム。

この映画はカウリスマキが26歳のときに撮った長編処女作です。処女作とはいえ、カウリスマキ節とも言えるその独特の寡黙な作風は完全に出来上がっています。静かに淡々と進むストーリー、必要最低限の台詞、感情を表に出さない人物たちとは対照的に饒舌に語ってくるロック音楽、その抜群の選曲センス、不思議とカウリスマキ映画に集まってくるらしい印象的な顔の役者たち。ドストエフスキーの代表作を設定を変えて、カウリスマキ的手法で青年の苦悩を描きます。

罪と罰 白夜のラスコーリニコフ
あらすじ:青年は殺人を起こしながらも罪の意識を感じることがありません。

食肉解体工場で働く青年ラヒカイネン(マルック・トイッカ)は、ある日の夕方、ある中年男の部屋を訪ね射殺します。そこに現れた女・ エヴァ(アイノ・セッポ)は驚きながらもラヒカイネンを逃がします。エヴァはラヒカイネンに自首を勧めますが彼は拒否します。その後もラヒカイネンは堂々とした態度を貫き、まったく罪の意識を感じることがありませんでした。


見どころ
  • すでに完成されているカウリスマキの作風
  • 青年にとっての罰とはなにか?
  • ブレッソンへのオマージュ作品

青年の不幸と青年の罪を天秤にかけると一体どちらが重いのか?主題に関しては原作同様、観た人がそれぞれの感想を抱くと思います。このような作品をセンチメンタリズムを極力排除して観ることができるのは素晴らしいことです。最近、映画館で最新映画の予告編を眺めていると、数分間の映像を観るだけで涙が出てくるような感傷的な作品が多いなあと思います。そのなんだか誘導されていく感じに違和感を覚えることもあって、そんなときはカウリスマキブレッソン小津安二郎みたいなストイックさのある映画がとても愛おしく感じますね。

ロベール・ブレッソンも『やさしい女』『白夜』などで同じくドストエフスキー作品を映画化していますが、ブレッソンが舞台を現代のパリに移して描いたように、カウリスマキは舞台を現代のフィンランドに移して現代の青年の苦悩を描きました。(たしかカウリスマキ監督は影響を受けた映画監督としてブレッソン小津も挙げていたなあ、納得。)

それにしても一度見たら忘れられないインパクトのある役者さんばかりよく集めるなあと感心してしまいます。この映画の主演のマルック・トイッカも友人役のマッティ・ペロンパーもなんというか、「カウリスマキ映画の人の顔」って感じがする。

[Photo: © 1983 Villealfa OY]

60〜90分というのもカウリスマキ映画の良さ。

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