愛の渦 | 一晩限りの歪な人間関係

本能と欲望渦巻く群像劇

愛の渦

『愛の渦』（2014／日本）
監督：三浦大輔　出演者：池松壮亮、門脇麦、滝藤賢一、中村映里子、新井浩文、三津谷葉子、駒木根隆介、赤澤セリ

ぽつり、ぽつり、と零れる言葉がしみじみ。

22:00〜6:00の一晩（プラスちょっと）のお話。クセのある（そして性欲のある）男女8人が織り成す密室会話劇です。もともとは舞台作品（演劇ユニット「ポツドール」の戯曲をポツドールの主宰・三浦大輔が自ら監督）。脚本の面白さはもちろん、会話のテンポや間が絶妙で良かったな。ぽつり、ぽつり、と零れる言葉がなんだかとてもしみじみと感じられて、台詞以上のものが伝わってきました。
愛の渦
あらすじ：乱交パーティーに集まった男女がやりまくります。

とあるマンションの一室、夜な夜な開催される秘密の乱交パーティー。参加費用は、男性2万円、女性1000円、カップル5000円。今夜も男女８人の参加者が集まりました。普通のサラリーマン（滝藤賢一）やOL（三津谷葉子）、フリーター（新井浩文）のほか、親からの仕送りを参加費用にあてて参加するニートの男（池松壮亮）や一見おとなしいけど人一倍性欲の強い女子大生（門脇麦）が参加。服を脱いでシャワーを浴びて、妖しい一夜が始まります。

見どころ

脚本のおもしろさ
ひとつひとつの台詞が丁寧に撮られている（気がする）
役者さんたちあっぱれすぎた

「上映時間123分中、着衣時間18分半」という謳い文句に偽りなし！登場人物はほぼずっと裸（もしくは裸にバスタオル1まい）です。どこかのマンションの一室で行われる乱交パーティーに集まった見知らぬ男女の一晩のお話、という設定だけでもうすでに面白いですよね。そこで彼らは一晩限りの人間関係を構築していくわけですが、通常の人と人とが接近する速度や順番とまったく違ったそれを観察するのがまた面白いです。

最初こそ気まずい空気がありましたが、彼らは衣服と同時に常識や遠慮も一緒に脱ぎ捨てたように見えました。徐々に本音を露にしていく彼らでしたが、それでもまだ裸になりきれない心を残しつつ歪な人間関係を構築していきます。

ちなみにベッドシーンはかなり大胆で激しいです。よくぞここまで！というほどの体当たり演技で役者さんみんなすごかった…。個人的にはコミュニケーションを排除したセックスにエロさはあまり感じませんでした。鑑賞してる方もだんだん麻痺してくるし表現も直接的なので、もはやなんだかスポーツでも見ているみたいな清々しさすら感じました。

たしかに本能と欲望はめちゃくちゃ渦巻いていたけど、はたしてそこに愛はあったのか。決定的な台詞があえて伏せられていたのがニクいですね。