CINEMA MOND【シネマモンド】

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恋の罪 | 怖いもの見たさで覗きたい地獄

ディープでエログロな園子温ワールド

恋の罪

恋の罪』(2011/日本)
監督:園子温 出演者:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵

こちらが愛の地獄です。

この映画は、東電OL殺人事件(夜は娼婦という別の顔を隠し持っていたエリートOLが何者かに殺された未解決事件)を元ネタにして創作されています。園子温的エログロ感が満載です。あくが強いので好き嫌いは分かれるかも。じっとりとして不気味で夢に出てきそうな気持ち悪さがあるけど、それこそが本作の魅力です。詩の引用や台詞まわしが効いていたり、妖しい色味の映像だったり、娯楽性よりも芸術性の高い映画でした。

恋の罪
あらすじ:彼女はなぜ売春し、なぜ殺されたのか?

渋谷区円山町のラブホテル街で起きた殺人事件。担当刑事の和子(水野美紀)は、表向きは家族と満ち足りた生活を送る女性ですが、実はドSの愛人との関係を断つことが出来ないでいました。徐々に明らかになった被害者は、大学で助教授をしている美津子(冨樫真)。彼女はエリートでありながら、夜な夜な街に繰り出し売春をしていました。さらに主婦のいずみ(神楽坂恵)との関係も描かれていきます。


見どころ
  • 冒頭から圧倒的
  • 悪夢をみる覚悟も必要かもしれません
  • 台詞や詩の引用にハッとします

冒頭から圧倒されるラブホシーン。水野美紀のヘアヌードももったいぶらずにさらっと出してきます。キャッチコピーは「ようこそ、愛の地獄へ。」。園子温はいろんな地獄を描くよなぁ…。

もう、気持ち悪さが絶妙なんです。怖いもの見たさ具合をくすぐるというか。特に美津子の母が気持ち悪すぎる!(褒め言葉)ニコニコしながらお上品な言葉遣いで、娘の売春について会話するシーンは悪夢ですよ。母親役の大方斐紗子さん、この役のインパクトが大きすぎて、他の作品でいいおばあちゃん役で出ててもなんか裏がありそう…って思うようになってしまった。

物語中に何度か引用される詩の朗読が印象深いです。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる

田村隆一の「帰途」という詩だそうです。ラストでいずみがこの詩を朗読するシーンには心を奪われます。彼女の感情が理解を超えて湧き出てきて、こっちまで引きずられる感じ。そして、言葉は便利だけど肝心なときに役に立たないと思いました。

売春について「愛がなければ金を取らなきゃ」という美津子の台詞は明快です。なるほど、確かに愛もお金も関与しない関係は不健全な気がしてきます。果たして、彼女は愛を求めていたのでしょうか?ラストの和子の台詞が秀逸でした。

[Photo: © 2011 「恋の罪」製作委員会]

不思議と繰り返し見たくなる。

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