CINEMA MOND【シネマモンド】

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まぼろし | ミステリアスで美しい狂気

オゾン流に描く愛の喪失

まぼろし

まぼろし』(Sous le sable/2000/フランス)
監督:フランソワ・オゾン 出演者:シャーロット・ランプリング、ブリュノ・クレメール

シャーロット・ランプリングの独壇場です。

これはシャーロット・ランプリングに魅せられる映画です。夫を失って静かに狂ってしまう女性の微妙な心情を表情だけで伝えてくる演技の素晴らしさ!生真面目な雰囲気がより危険を感じさせます。三白眼の迫力もヤバい。ミステリアスで美しい狂気を感じたい方におすすめです。

まぼろし
あらすじ:夫を失った中年女性が夫の幻覚を見続けます。

一見幸せそうな中年夫婦のマリー(シャーロット・ランプリング)とジャン(ブリュノ・クレメール)。2人は夏のバカンスで毎年恒例の南仏の別荘にやってきました。浜辺に出てくつろぐ2人でしたが、マリーが少し昼寝をしている間に夫はいなくなっていました。彼女は警察に届けを出して、捜索してもらいますが見つからず。1人でパリの自宅に戻った彼女は何事もなかったように普通に夫と暮らしているように見えますが、それは幻覚でした。


見どころ
  • シャーロット・ランプリングの名演技
  • 狂気で愛を表現する
  • 真実を想像してみる

愛する人を失った喪失感を映画で表現しようとしたときに、ただただ悲しんでいる様子を撮らないところがオゾン監督のセンスですね。マリーは夫の失踪を受け入れることができず幻覚を見るようになりますが、全然おかしな人のようには描かれていません。完全にマリーに感情移入できて共感できるくらい、彼女の心情が自分の中に入ってくる。彼女が幻覚を見るたびに夫への愛情がどんどん強調されてなんとも切ないです。

なぜ夫は突然失踪してしまったのか?自殺だったのか、事故だったのか?妻を愛していなかったのか?というマリー、そして視聴者の疑問は結局明らかにはなりません。それゆえいっそう切なくさせるし、救われるし、ゾッとするような怖さも残る。観終わったあとは余韻に浸りたくなる映画です。

それにしても原題と比べて邦題はちょっとひどいかも。原題『Sous le sable』は直訳すると「砂の下」。物語の最初と最後に砂浜が出てきます。ジャンと最後に過ごした砂浜は全編通してキーになっているのです。砂の下に何があるのか、どういう意味が込められているのかは分かりませんが、それを想像する余地があって面白いと思います。そこで邦題が『まぼろし』。タイトルとして耳ざわりは良いけどネタバレすぎるよ…。それにマリーは「まぼろし」だって認めてないし…うーんもやもや…。

余談ですけど、同じオゾン監督だと『ぼくを葬る』(ぼくをおくる、と読ませる)なんかはとても秀逸でかっこいい邦題です。原題は『Le Temps qui reste』。直訳すると「残りの時間」でしょうか。余命宣告された青年の話です。こっちは原題の方が直接的ですね。

[Photo: © 2000 STUDIOCANAL – Haut et Court Production – Arte France Cinéma]

どちらも「死」がテーマ。

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