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ペーパームーン | ニセモノだって信じれば本物に

これぞ映画の王道的名作

ペーパームーン

ペーパームーン』(Paper Moon/1973/アメリカ)
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ 出演者:ライアン・オニール、テータム・オニール

親子なの?親子じゃないの?

実に映画然とした映画です。”映画”という普遍的なイメージを具現化したらこんなんできましたみたいな。つまりもう名作すぎるってことです。モノクロでシンプルなストーリー、度々出てくるわき見運転も古いアメリカ映画っぽさを良く醸し出してる。10歳の少女がタバコ吸いまくるし、そもそも詐欺師の話だしモラル的には良いとは言えない映画ですが、そのデカダンな感じが大きな魅力でもあるんですよね。

ペーパームーン
あらすじ:詐欺師のおじさんと利口な女の子が車で旅します。

1935年、大恐慌期。9歳のアディ(テイタム・オニール)は事故で母親を亡くしてしまいます。唯一の身寄りである叔母のもとへモーゼ(ライアン・オニール)という男が連れて行ってくれることに。アディの母は生前彼と深い関係にあったらしく、もしかしたらモーゼはアディのパパかもしれない。モーゼは道中、詐欺の手口で聖書を売りつけて回るが、それを見ていたアディは口をはさむようになります。賢いアディのおかげで儲けが増え、次第に彼らは親子のふりをして「仕事」をしていきます。


見どころ
  • タイトルが良い
  • ライアン・オニールとテータム・オニールは親子です
  • テータム・オニールの子供らしくない演技

ここまで完璧に映画然としている理由って思うに、これが70年代に「再現」されたものだからじゃないかな。おじさんと女の子のロードムービーという構図はフェリーニの名作『』を彷彿とさせるし、カラー映画時代のモノクロ撮影や、やたらシンプルなストーリーはあえて映画の原点回帰している印象を受けます。それが同時に普遍的な映画っぽさを演出しているような。そういった意味ではこの映画は「作りもの」であると言えますが、実はそれこそがこの映画のテーマなんですよね。

この映画の何が良いってまずはタイトルの響きが良い!なんか良い!これはテーマ曲にもなっているジャズスタンダード『It’s Only a Paper Moon』から取られたもの。歌詞をざっくり言うと「ただの紙の月でも信じれば本物の月になるよ」っていう歌です。(本当にざっくり)村上春樹1Q84』の扉にも出てきました。もともと原作のタイトルは違うものだったそうですが、映画のヒットにより原作のタイトルも『ペーパームーン』に変更してしまったという逸話があります。

「ペーパームーン」というのは、カーニバルの記念撮影の背景として吊られた紙製(ダンボール製?)の三日月のことです。楽しい思い出を形として残す、いわば幸福の象徴とも言えるもの。劇中にも出てきますが、珍しくアディの子供っぽさが見れるシーンで好きです。

さて、先述したようにこの映画のテーマは「ペーパームーン=作りもの」です。それは詐欺師という職業(?)そのものを表すようでもあるし、2人の関係(ニセモノの親子)を示しているようでもあります。結局2人が本物の親子だったのかどうなのかは物語の中では答えがでません。しかし演じているのが本当の親子なだけに、違和感なく親子に見えるという演出がニクい!

[Photo: © 1973 Paramount Pictures.]

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